「1日でできる分煙コンテスト」にたくさんのご応募をいただき、
ありがとうございました。
公正な審査の結果、以下の通り優秀賞が決定しました。
優秀店の発表と、選ばれた店舗の優れた分煙手法をご紹介します。
分煙手法でまず多かったのが「エリア分煙」。たとえば、店の形状を利用して、仕切りを設けずに喫煙席と禁煙席を分ける店。コーヒーの香りが楽しめるよう、カウンター席を禁煙にし、テーブル席を喫煙可にする店など。喫煙席と禁煙席の境界に、パーテーションやロールカーテンなど自分で簡易的な仕切りを設置して分煙する店もありました。
また、テラス席がある、2階建てといった店舗の特性を活かして分煙をしている店も。女性や家族連れのお客が多いため、店内は禁煙でテラス席は喫煙可にしているカフェや、1階と2階で喫煙環境を変える「フロア分煙」を実施して効果を上げているカフェからの応募もありました。
こうした様々な分煙手法の中から、喫煙環境整備の基本をしっかり押さえ、集客面でも効果を上げている3店舗を、優秀店舗として選出しました。
『珈琲亭しなだ』は観光地の駅前立地にあり、約20年前から分煙に取り組んでいるカフェです。店の形状を上手に活かし、分煙アイテムも併用して、喫煙客と非喫煙客のどちらにも心地よい空間をつくり出しています。
『カフェ ラッタ』は住宅街にある、地元客が中心の店。開放的な空間を大切にしながら、背の低い腰壁を使って居心地のよい喫煙席を設け、常連の喫煙客に喜ばれています。
『カフェ ストラーダ』は、住宅街とオフィス街の混合立地にあるカフェ。17坪という小規模店で、仕切りなしのエリア分煙を実施しています。分煙すると客席稼働率の低下が気になりますが、この店は接客の工夫でこの問題を回避し、集客を維持しています。
「個人店で分煙は難しい」と思われがちですが、選ばれた3店は空気の流れを考慮しながら、完全な仕切りを設けなくても、双方に心地よい分煙を実現しており、そうした点が高く評価されました。優秀店舗の手法を参考にして、より多くの店が分煙に取り組み、たばこを吸う人と吸わない人のどちらにも利用してもらえるカフェが増えることを、私たちは願っています。
富田佐奈栄
カフェビジネススクール『カフェズ・キッチン』学園長/日本カフェプランナー協会 会長
カフェのスペシャリストとして、各メディア出演、本の出版、食品メーカーのメニュー提案など、幅広い分野で活躍中。
中川恵介
コムスペース株式会社
代表取締役
シニア商業施設士
商業施設や店舗の空間デザイン、設計、プロデュース、コンサルティングなどに従事。『カフェズ・キッチン』の講師も担当。
三瓶 拓
個人カフェ.com
株式会社アキチ
代表取締役
全国の個人カフェを紹介するサイト『個人カフェ.com』や、カフェ開業の情報サイト『個人カフェ開業.com』を運営。
前田和彦
月刊カフェ&レストラン
編集長
1994年旭屋出版入社。「近代食堂」編集部を経て、2001年より現職。
給気は非喫煙エリアで、
排気は喫煙エリアで行う
店内の換気は、給気と排気を組み合わせて行うのが基本。席の配置も、給気口と排気口の位置を考慮して決める。基本的に非喫煙エリアから給気し、喫煙エリアで排気すると、一方向の空気の流れができ、たばこの煙やニオイが非喫煙エリアに漏れにくくなる。また、給気口から排気口への気流を考慮すると、窓を開けない方が望ましいが、窓を開ける際は非喫煙エリアの窓を開けるとよい。
エアカーテンを設置する
見た目の開放感を大事にしたい店、喫煙エリアと非喫煙エリアの間にドアの設置を避けたい店には、エアカーテンを導入するのも一案。分煙目的のエアカーテンは、喫煙席側に排気設備を設けることで、効果を発揮する。また、風量が強すぎると、床面で気流が乱れ、非喫煙エリア側に煙が漏れることもあるので、風量の調整や床面までの高さの調整をすることが望ましい。
簡易的な仕切りを設ける
「café Ratta(カフェ ラッタ)』のような腰壁を造作するのが難しい場合、簡易的な仕切りで分煙環境をつくる手もある。たとえば、市販の収納棚や植栽を仕切りとして置く。天井からロールカーテンやブラインドをつるし、必要に応じておろして仕切るなど。こうした手法なら比較的コストがかからず、どの店もすぐに導入できる。
天井エアコンは
非喫煙エリア側の
吹き出し口をふさぐ
天井埋め込みカセット型空調機を使用している店は、四方向ある吹き出し口のうち、非喫煙エリア側に向かう吹き出し口をふさいだり、風の向きを変えたりすると、たばこの煙が非喫煙エリアへ漏れにくくなる。
分煙効果を高める接客
喫煙席と禁煙席の希望が偏ってしまったとき、『CAFFÈ STRADA(カフェ ストラーダ)』のように、なるべくお客を逃さないような席の誘導が重要になる。強制ではなく、お客の意思を聞いた上で、席の移動も可能であることを伝える。こうした店側の配慮をプラスすれば、分煙の効果もさらにアップする。